独立時に顧客(お客様)を奪っても大丈夫?損害賠償を請求されるって本当?

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独立時に顧客(お客様)を奪っても大丈夫?


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在籍していたお店やサロン、企業から退職⇒独立⇒新規開業へと順調に進むことは嬉しいことです。しかし、ここで大きな課題に直面することになります。

それは、どのように集客をしたらいいかということです。独立・新規開業時には集客でとても苦労することがあります。

そこで、前に在籍していたお店やサロン、企業の顧客(お客さま)を奪うのはどうかなと考えるかもしれません。

果たしてこれは有りなのでしょうか。後でトラブルにでもなると、困りますね

今回はこの辺の問題について、様々な面から考察してみましょう。

目次

独立時に顧客(お客さま)を奪って大丈夫?

独立・新規開業した従業員やスタッフが以前在籍していたお店やサロン、企業からお客さまを奪ってだいじょうぶなのでしょうか。

お客さまを奪うとは、悪くいえばぶんどること、軟らかい表現を使うと引き抜くということですが、いけないことのようにも思えます。

いいのか悪いのか気になりますね。そこで、様々な観点から検証してみましょう。

 

どうして独立した従業員やスタッフがお客さまを奪うのか?

どうして独立時にお客さまを奪うのでしょうか。

これは、独立した従業員やスタッフが新規開業したお店やサロン、企業の経営が不安定なためです。

独立したての頃は、まだ固定客がつかず、思うようにお客さまが集まりません。

あれやこれやの施策を行っても、うまくいかないこともあります。

そのようなことを嫌がり、独立した従業員やスタッフが前に在籍していたお店やサロン、企業からお客さまを奪うことを考えるのです。

これである程度、顧客数を確保できれば、売りあげもあっぷ⤴し、経営も軌道に乗りやすくなります。

 

お客さまを奪って裁判沙汰になることがある

独立・新規開業した従業員やスタッフが前に在籍していたお店やサロン、企業からお客さまを奪って、売りあげが上がることは嬉しいことでしょう。

ただ、嬉しいだけでは済まないかも。前に在籍していたお店やサロン、企業から訴えられる可能性があることも頭に入れておかなければいけません。

裁判沙汰になって、損害賠償請求などを起こされたら、厄介です。

もしその請求が認められれば、お客さまを奪って売りあげがあっぷしても、損害賠償金の負担が生じるので、後で苦労することにもなります。

 

訴えは認められるか認められないか?

独立した従業員やスタッフが前に在籍していたお店やサロン、企業からお客さまを奪って訴えられたとき、その訴えが認められるかもしれないし認められないかもしれません。

判例を見ると、ケースバイケースとなっているようです。

そのため、独立した従業員やスタッフがだいじょうぶなこともあれば、だいじょうぶでないこともあります。

 

法律上のルールは?

独立後にお客さまを奪うことが法律上で禁じられているのか禁じられていないのかも気になるかもしれません。

この点については、特に禁止事項にはなっていません。

基本的に法律上はお客さまを奪う行為は違法とは定められていないのです。

独立したお店やサロン、企業であろうが、元々あるお店やサロン、企業であろうが、自由にお客さまを奪い合っていいことになっています。

日本では、自由競争の原理が機能しているためです。

 

先行きイメージに注意を

お客さまを奪う行為はいけないことであるとのイメージも定着しています。

中には、違法行為であると思い込んでいる方もいるようです。

そのイメージのまま、「お客さまを奪われたら、後で訴えればいいだろう」と高をくくっていると、裁判に負けてしまうこともあります。

そうなれば、裁判に掛かる費用や手間、時間も無駄になりますし、お客さまも奪われたままになり、損失も大きくなります。

独立した側はいけない行為であると思って、遠慮しすぎると、お客さま獲得のチャンスを失うこともあるでしょう。

そのため、先行きイメージにとらわれず、現在の正確な状況をつかんでおくことが大事です。

 

独立時にお客さまを奪う際、どんなことに注意すべきか?

独立・新規開業時にお客さまを奪う行為は違法ではないので、可能なことは可能です。

だからといって、やりたい放題にできるというわけではありません。

適切なルールを守り、注意しながら行わなければいけないのです。

そこで、どんなことに注意すべきかを考えてみましょう。

 

お客さまを奪って、以前と同じような契約を結ぶのは構わない

独立・新規開業時にお客さまを奪う行為は法律上、一部の例外を除きokなのですが、お客さまを奪うだけでなく、以前在籍していたお店やサロン、企業でのときと同じ契約を結ぶのも構わないことになっています。

お店やサロン、企業が変わったから、契約内容も変えなければいけないというルールはありません。

同じメニューで同じ施術を提供し、同じ代金を受け取ってもだいじょうぶです。

メニューや施術内容、代金も好きなように決められます。

前に在籍していたお店やサロン、企業と全く同じ内容のサービスを提供しても全く問題はありません。

 

独立前にサインした内容に注意

前に在籍していたお店やサロン、企業から独立する前に、何らかの書類にサインしていることがあるかもしれません。

その内容には注意が必要です。基本的に前に在籍していたお店やサロン、企業との間でサインした書類が効力を発揮するのは退職前まで。

しかし、書類によっては、退職後、独立してからも効力を発揮するものもあるのです。

そのため、サインした内容を再確認する必要があるでしょう。

その書類の中に、独立後のお客さまの引き抜きに関する内容はなかったでしょうか。

もしあり、そのうえで独立後にお客さまを奪うということになると、契約違反に問われることがあります。

ただし、これが裁判で必ず認められるかどうかは別です。

在籍規則や誓約書などで書かれている内容は退職前に適用すべきで、退職後、独立してからは無効と判断されることもあります。

あまりに厳しい制限を課した在籍規則や誓約書では、職業選択の自由を侵すという観点から、認められないこともあるのです。

とは言え、有効になる可能性もあります。そのため、以前在籍していたお店やサロン、企業との間でどのような書類と内容にサインしたのか再チェックしてください。

 

損害を退職金から相殺させられることがある

以前在籍していたお店やサロン、企業との関連でいうと、次のような問題が生じることもあります。

それは、誓約書で独立後にお客さまを引き抜いた場合の損害を退職金から相殺すると定められている場合です。

これが有効となると、せっかく集客に成功しても損をするので、経営上の利益にはなりません。

ただし、これも有効になるかどうかはケースバイケースです。

実際に退職金から前のお店や会社の損害分を相殺しなければいけない場合もあるし、必要ない場合もあります。

この辺はどうなるか分かりませんから、やはりサインした書類を再確認した上で対処しましょう。

 

退職時には誓約書にサインしなくても大丈夫

退職する予定のお店やサロン、企業では、退職時に誓約書へのサインを求める場合があります。

その誓約書の中に、独立後のお客さま引き抜きに関する条項があることもあります。

これを見ると、独立後にお客さまを奪ってはいけないのだろうとも思えますが、退職時の誓約書にはサインをしなくてもだいじょうぶです。

中には、誓約書にサインしないと退職させないと脅すところもあるといいますが、そんな義務はありません。

サインをするのもしないのも自由ですから、自分でよく考えて判断してください。

もし強制的に誓約書へのサインを求められたのなら、そのサインは無効になる可能性が高いです。

強制を証明さえできれば、誓約書に従う義務は免除されます。

 

不正競争防止法違反になるかも

基本的に、前に在籍していたお店やサロン、企業から独立して、お客さまを奪うことは法律上問題はありません。

ただし、すべてのケースではないことにご注意ください。

例えば、不正競争防止違反に問われるかもしれないのです。独立後のお客さまの奪い方が適切でない場合です。

不正競争防止法違反になると、前のお店やサロン、企業からの損害賠償にも応じる必要性が生じたり、差止請求にも答えなければいけなくなったりすることがあります。

また、罰則も用意されています。では、どのようなときに不正競争防止法違反になるのでしょうか

それは、【営業秘密】を侵した場合です。

【営業秘密】の要件は以下の通りです。

・秘密管理性
・非公知性
・有用性

この要件を侵すことがあれば、不正競争防止法に問われます。

もう少し具体的に説明しましょう。

独立した従業員やスタッフが前のお店やサロン、企業のお客さまに働きかける際にそこで秘密管理されていたお客さま情報を使うとバツ、不正競争防止法違反となります。

勝手に秘密管理されていたお客さま情報を使ってはいけないのです。

 

独立時にお客さまを奪うのは可能だが、少し待った方がいいかもしれない

独立時に前に在籍していたお店やサロン、企業のお客さまを奪うこと自体は可能です。

ルール違反を犯さず、適正な形での引き抜き行為なら許されています。

ただ、退職・独立後すぐにお客さまを奪うというのも、問題視されやすいことではあります。

前に在籍していたお店やサロン、企業に対しても失礼になるでしょう。

そこで、退職後、ちょっと待ってからお客さまを奪う、引き抜いてみてはいかがでしょうか。

明確な待ち時間の基準はありませんが、半年か1年くらい待つのもおすすめです。

このくらいの期間経過後にお客さまを奪うということなら、大きな問題にならずに済むこともあります。

少し間を置いておくことで、前に在籍していたお店やサロン、企業も気にしなくなるかもしれません。

ただし、退職時にサインした誓約書にお客さま引き抜き期間についての取り決めがあるのなら、それには従っておく方が無難です。

 

前に在籍していたお店やサロン、企業を貶めるようなことをいうべきではない

独立時に前に在籍していたお店やサロン、企業からお客さまを奪おうとする際に、貶めるようなことをいい、さも自分が経営しているお店の方が優れていると説明したくなることがあるかもしれません。

「○○店はこんなところがひどいんですよ」といい、自分が新たに作ったお店は「こちらはそんなことはなく、ここが優れています」などといいたくもなるでしょう。

そうすれば、お客さまも自分のお店を積極的に利用してくれるようにも思えます。

しかし、これも問題視されやすいことです。

前に在籍していたお店やサロン、企業について虚偽の情報をお客さまに伝えて、勧誘することは違法行為となる可能性が高いです。

訴えられたら、負けてしまうことがあります。そうなれば、損害賠償などを支払わなければならず、大きな損失が生じます。

そのため、前に在籍していたお店やサロン、企業を貶めるようなことをいうべきではありません。

 

専門家に相談しておこう

独立時に前に在籍していたお店やサロン、企業のお客さまを奪うことは、例外を除いて違法行為ではありませんから、やっていけないということはありません。

しかし、お客さまを奪うことで、何らかのトラブルが生じることは考えられます。

トラブルが穏便に解決すればいいですが、そううまくいかないこともあります。

そのようなトラブルに遭ってから対処することはできるものの、できればお客さまを奪う前に、専門家に相談しておきたいところです。

専門家のアドバイスを受けて、だいじょうぶかチェックしてから、お客さまを奪う、引き抜くという行為を行う方が無難です。

 

退職・独立する従業員やスタッフがお客さまを奪うのを防げるのか?

ここからは、視点を変えて、お客さまを奪われる側のお店やサロン、企業にとっての防御策を考えてみます。

お店やサロン、企業としては、独立した従業員やスタッフにお客さまを奪われるのは避けたいというのが本音でしょう。

でも、それにはどうしたらいいでしょうか。できる対策を見てみましょう。

 

退職・独立後の競業行為を禁ずる

競業行為とは、在籍しているお店やサロン、企業と競合する会社に転職する、競合するお店やサロン、企業を設立するなどの行為です。

その中には、退職・独立後競合店舗や企業を設立して、お客さまを奪う行為も含まれます。

退職していく従業員が競業行為をすることを禁ずるために競業避止義務を課すこともできます。

合意書や誓約書を作成して、サインしてもらえばいいのです。

これで独立する従業員やスタッフによるお客さまの引き抜き行為を禁じることができます。

ただ、厳しすぎる競業避止義務を課した合意書や誓約書は無効とされることもあります。

それでは、作成し、サインしてもらう意味がありません。

そこで、弁護士などの専門家に相談しながら、有効になる可能性が高い競業避止義務を定めてみましょう。

これで、独立する従業員やスタッフによるお客さまの引き抜きを防止しやすくなります。

 

秘密保持契約を結んでおく

退職する従業員との間で秘密保持契約を結んでおくと、カンタンにはお客さまを奪われにくくなります。

前に在籍していたお店やサロン、企業のお客さまを奪うという場合、単に勧誘活動をするだけでなく、そのお店やサロン、企業が保有・管理している秘密情報を使ってという場合があります。

お客さま名簿やマニュアルの持ち出しなどのケースです。このような事態は避けたいところ。

お客さま名簿やマニュアルなどを、他のお店やサロン、企業に使われることがあってはいけません。

そこで使える手段が秘密保持契約です。独立していく従業員やスタッフとの間で秘密保持契約を結んでおくと、お店やサロン、企業が保有する秘密情報を勝手に持ち出す・使うことができなくなります。

結局、独立していく従業員やスタッフは記憶だけを頼りにお客さまを奪うしかないのですが、それでは引き抜けるお客さまの範囲も限られてくるでしょう。

 

お客さまを奪われたお店やサロン、企業は何をすべきか?

お店やサロン、企業が独立していく従業員やスタッフにお客さまを奪われないような対策をしていても、奪われてしまうことがあります。

そのような場合、何ができるかを提案してみます。

 

損害賠償請求訴訟を起こす

退職・独立した従業員やスタッフにお客さまを奪われると、お店やサロン、企業には損害が発生します。

その損害に対する賠償請求訴訟を起こすことができます。ただ、いかに損害を立証するかが課題です。

奪われたお客さまの範囲、具体的な売りあげ減少額などを示せないと、損害賠償請求が認められないかもしれません。

 

差止請求

競業避止義務に違反した従業員やスタッフに対して、差止請求もできます。

ただし、期間が限られているので、裁判の長さによっては無効になってしまうこともあります。

そのようなことを防ぎたければ、仮処分請求をしてみましょう。

 

退職金の返還請求をする

退職・独立した従業員やスタッフが退職金もたっぷりもらった上に、お客さまも奪うということになると、前のお店やサロン、企業の損害がとても大きくなります。

そのようなときに取れる手段が退職金の返還請求をすることです。

その際、在籍規則や雇用契約書にその旨が記載されていると、請求が通りやすくなります。

 

刑事告訴をする

お客さまを奪われたお店やサロン、企業にとって直接の損害回復に役立つことではありませんが、違法となる可能性がある行為については、刑事告訴をするという手もあります。

その結果、違法性があるということなら、お客さまを奪った者が処罰を受けます。これで少しは鬱憤も晴れるでしょう。

 

奪われたら奪い返してみる

独立した従業員やスタッフにお客さまを奪われたら、奪い返してみてはいかがでしょうか。

カンタンなことではないかもしれませんが、以前よりもサービスを充実させますと持ちかけてみて、お客さまの意向を伺ってみましょう。

その持ちかけがうまくいけば、お客さまが戻ってくるかもしれません。

 

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堀田 直義

堀田 直義

株式会社じむやの代表取締役。ドライヘッドスパ専門店ヘッドミント25店舗展開。X(旧Twitter)で「堀田直義」で検索!

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